1.ナマコより単離したペプチドNGIWYamideの抗体を作成し、ナマコを染色したところ、以下の神経が染まった。放射神経のhyponeuralとectoneuralの部分、環状神経、触手神経、腸の神経そう。NGIWYamideは神経ペプチドであると結論できる。NGIWYamide抗体陽性の染色は、体壁の真皮内にも見られた。抗体陽性反応の見られた部分を用いて、NGIWYamideの効果を調べた。NGIWYamideは真皮を硬くする効果をもった。触手では収縮を起こし、腸管では自発性収縮を抑制した。 2.この抗体でウニを染色したところ、放射神経と、棘の根元を取り巻いている神経環とそれから筋肉や結合組織にのびている神経、管足が染まった。NGIWYamideは、それ自身では管足の収縮を引き起こさなかった。しかしアセチルコリンによる収縮を増強した。NGIWYamideの抗体でヒトデを染色したところ、放射神経のectoneuralの部分とhyponeuralの部分のどちらもが染まった。また管足の先端に近い管足神経が染まり、NGIWYamideは管足の収縮を引き起こした。以上の結果から、NGIWYamideは、棘皮動物において筋肉とキャッチ結合組織を支配している普遍的神経ペプチドであると結論できた。 3.ウミユリの巻枝の神経系を光学顕微鏡と電子顕微鏡により観察し、BSO細胞(bullet-shaped organelleをもつ細胞)が巻枝骨片内で網目状のネットワークを形成し、結合組織の硬さを直接制御しているとされるjuxtaligamental cellに連絡していることが分かった。BSO細胞は結合組織を支配する神経系(もしくは神経分泌系)の可能性が高い。
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