研究概要 |
ジュウシマツ♀成鳥に同種♂の囀りをプレイバックして脳内zenk遺伝子の発現を誘導した後、脳からAGPC法によりトータルmRNAを調製分離し、ランダムプライマーを用いたRT-PCR法によりcDNAを作成した。その後、5'RACE法、3'RACE法、direct sequencingにより、ジュウシマツzenk cDNAのアミノ酸コード領域を全て含む1549bpの塩基配列を決定した。決定されたジュウシマツzenkの塩基配列は、ヒト,マウス,ゼブラフィッシュのegr-1とそれぞれ68.1%,67.1%,66.3%の相同性が認められた。 上記の過程で決定した塩基配列を基に、翻訳開始点付近を標的部位としてアンチセンスODNを設計し、生体内で分解されにくく毒性も低いphosphorothionate-ODN (S-ODN)のアンチセンスS-ODN、FITC標識したアンチセンスS-ODN、対照のセンスS-ODN(リバース配列S-ODN)を入手した。これらのS-ODNをジュウシマツ脳内に微量注入し、一定時間後に脳を固定して組織学切片を観察したところ、FITC標識したアンチセンスS-ODNのニューロンへの取り込みは確認されたが、取り込んだニューロンの分布域が狭く、アンチセンスS-ODNによるZENKタンパクレベル上昇抑制の有無は厳密に判定できなかった。HVJ-リポソーム法を用いた実験では、カチオンタイプタイプHVJ-リポソームに封入したアンチセンスS-ODNはアニオンタイプよりも広い範囲のニューロンに取り込まれ、ZENK陽性細胞数がより少なくなる傾向がみられた。 ジュウシマツ成鳥の頭部への慢性カニューレ装着法、定量化すべき行動応答、防音箱内での実験方法の検討を行い、ペリスタポンプよりもディスポ浸透圧ポンプを用いる方が有効であることが示唆された。ジュウシマツ成鳥の頭部に慢性カニューレを装着し、大脳NCM領域へアンチセンスS-ODNを注入した後に同種♂の囀りを繰り返しプレイバックする行動実験を試みたが、ZENK発現抑制の行動に与える影響については明確な定量的データは得られなかった。
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