研究概要 |
アフリカツメガエル幼生の尾部にある黒色素胞は,神経や内分泌系を介さない直接的な光に対する細胞応答性をもち,光存在下で細胞内部の色素顆粒が凝集,暗黒下では拡散する.申請者らはこの細胞系を用いて,非視覚系細胞における光応答機構の解明を試みているが,最近,脊椎動物視覚系と同じロドプシンmRNAが発現していることを見出した(Miyashita et al.,1998).一方,Provencioら(1998)はツメガエル胚から得た黒色素胞培養系における光受容分子として,メラノプシン(melanopsin)と呼ばれる無脊椎動物オプシンと近縁のオプシン分子を報告している.この培養細胞は幼生尾部の黒色素胞とは逆方向(光照射で色素顆粒が拡散,暗黒下で凝集)の光応答性を持つ.発生にともなうツメガエル黒色素胞の光応答性の変化がオプシン分子種の発現の違いによるものなのか,幼生の発生段階をおって検討した.発生初期(stage45),後期(stage54)の幼生において,眼のロドプシンに特異的なプライマーを用いたRT-PCRをおこなった結果,いずれにおいても皮膚中にロドプシンmRNAの発現が認められた.一方,メラノプシン特異的プライマーを用いたRT-PCRから,メラノプシンmRNAの発現が確認されたが,この発現は発生初期幼生でより顕著であった.これらの結果は,ツメガエル黒色素胞には脊椎動物タイプと無脊椎動物タイプの2種のオプシンが存在し,それぞれ異なる役割(ロドプシンは色素顆粒の凝集,メラノプシンは拡散)を果たしている可能性を示唆している.
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