研究課題/領域番号 |
11640688
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
西川 道子 福岡大学, 理学部, 助手 (30078563)
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研究分担者 |
伊東 綱男 福岡大学, 理学部, 講師 (40131809)
横張 文男 福岡大学, 理学部, 教授 (20117287)
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キーワード | 昆虫 / 脳 / キノコ体 / 触角 / 嗅覚 / 視覚 / ゴキブリ / ミツバチ |
研究概要 |
昆虫脳のキノコ体は行動の最高次の中枢であると同時に高次の記憶中枢でもあると目されており、昆虫の行動を理解する上で重要な研究対象になっている。特にキノコ体傘部のニューロパイルは種々の感覚情報が入力する部域である。本研究では、生息・行動様式の異なる昆虫のキノコ体に入力する神経繊維のモダリティーとキノコ体傘部での終末部域とその発達度合いおよび終末様式をしらべることにより、キノコ体の総体としての役割とその内部での機能分担を明らかにする事を目指した.本年度は、ゴキブリとミツバチのキノコ体において、主に嗅覚と視覚の情報がどのように終末しているかを比較検討し、次のような結果が得られた。ゴキブリのキノコ体傘部ニコーロパイルは中大脳投射ニューロンの終末様式から、同心円状に周縁部、中間部、基部に分けられる.嗅覚情報は、主に中大脳触角葉からの中大脳投射ニューロンによって運ばれ、その軸索はキノコ体傘部ニューロパイルの周縁部と中間部に終末し、その終末部域は傘部ニューロパイルの3分の2以上の容積を占めることが観察された。一方、ゴキブリの視覚情報に関しては、キノコ体傘部に終末する視葉からのニューロンは比較的少数で、終末部域も嗅覚情報に関するニューロン終末部域と異なり、傘部ニューロパイルの内側に見られる。ミツバチでは、キノコ体傘部は外部形態的にそれぞれ唇部、襟部、基底環と呼ばれる3層の分化が見られる。ミツバチの場合は、ゴキブリと異なり視葉からの入力繊維が終末する襟部のニューロパイルが大きな容積を占め、嗅覚情報の終末部域と考えられる唇部のニューロパイルは比較的小さい。このように、キノコ体傘部ニューロパイルには、感覚モダリティによる部域差があることが示唆された。ミツバチでは、触角葉からの投射ニューロンの終末部域である唇部において、さらなる細分化を示唆する結果も得られている。
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