研究概要 |
昨年度から今年度にかけて,当初の研究実施計画に記載したとおり,沖縄島,西表島およびインドネシアのスラウェシ島において,トウゴロウイワシ科の現場採集を行った.また,世界各地の博物館から模式標本を含む大量の標本を借用した.これらの標本に基づいて,特にインド洋-太平洋域のヤクシマイワシ属およびギンイソイワシ属魚類について分類学的再検討を行った結果,次のような新知見が得られた. 1.従来誤った形質が記載され,これが原因で極めて重大な混乱状態に陥っていたAtherinomorus endrachtensisと,A.endrachtensisとしばしば混同されてきたA.duodecimalisについて,両種の識別特徴を明確にし,分布域を明らかにするとともに,両種の異名について整理を行った.また,後者は日本に分布することを明らかにした. 2.Atherinomorus vaigiensisは,従来A.lacunosusの新参異名にされてきたが,後者とは別の有効種と認められ,さらに原記載以来長く有効種と考えられてきたA.ogilbyiの古参異名であることを明らかにした.また,A.cylindricusについては原記載で使用されたホロタイプを確定するとともに,これをA.vaigiensisの新参異名であるとした. 3.東アフリカおよび東南アジア海域において,2種のヤクシマイワシ属未記載種が存在することが明らかになった.今後これらの新種記載を行う必要がある. 4.Bleeker(1853)のAtherina japonicaについて模式標本調査を行った結果,この種はギンイソイワシと同種であることが判明した.しかし,この学名は同名による無効名であるため,ギンイソイワシの学名に変更はない. 5.トウゴロウイワシ科魚類の調査に付随して行われたヒイラギ科魚類の研究で,2新種が認められ,1種が日本初記録となった.
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