研究概要 |
平成11年度から平成13年度にかけて,当初の研究実施計画に記載したとおり,沖縄島,西表島およびインドネシアのスラウェシ島,およびタイのプーケット周辺において,トウゴロウイワシ科の現場採集を行った.また,世界各地の博物館から模式標本を含む大量の標本を借用した.これらの標本に基づいて,特にインド洋-太平洋域のヤクシマイワシ属およびギンイソイワシ属魚類について分類学的再検討を行った結果,今年度は次のような新知見が得られた. 1.インドネシアおよびフィリピンで採集された標本に基づき,ヤクシマイワシ属の1種Atherinomorus aetholepisを記載した. 2.従来ヤクシマイワシAtherinomorus lacunosusに同定されていた種は3有効種からなることを明らかにし,これらはインド-西太平洋域に広く分布するA.lacunosus,A.pinguis,および紅海の固有種と考えられるA.forskaliiに同定されることを明らかにした. 3.Ivantsoff and Kottelat(1988)はトウゴロウイワシHypoatherina valencienneiの再記載を行い,種の範囲を定義したが,これには問題があり,またH.woodwardiはこれとは明らかに別種であることを確認した.なお,彼らによって前種の新参シノニムにされたHaplocheilus argyrotaeniaは,後種の古参シノニムとなる可能性が高いことが明らかになった.さらに,Ivantsoff and Kottelat(1988)が定義したトウゴロウイワシには,複数種が含まれる可能性が明らかになった. 4.トウゴロウイワシ科魚類の調査に付随して行われたクロサギ科魚類の分類学的研究で,Gerres setifer種群の整理を行い,1種G.silaceusを記載した.
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