研究概要 |
琉球列島,インドネシア,タイ,フィリピンにおける現場採集と世界各国の博物館からの借用標本に基づいて,アフリカ東岸からハワイ海域に至るインド洋-太平洋全域におけるトウゴロウイワシ科魚類の分類学的再検討を行った.その結果,次のような知見が得られた. 1.ヤクシマイワシ属各公称種のタイプ標本調査から,本属各種の異名関係を明らかにするとともに1新種を発表し,さらに1種の未記載種を確認した.その結果,本属には11有効種が含まれることを明らかにした. 2.ギンイソイワシ属についても,各タイプ標本の調査から,本属には5有効種が含まれることを明らかにした.また,BleekerのAtherina japonicaは明らかにギンイソイワシと同種であるが,この名は一次同名であるため,本種の学名に変更はない. 3.Stenatherina属については,従来の知見どおり,1種が含まれる. 4.ムギイワシ属については,ムギイワシを除く他の種,亜種のタイプ標本を明らかにした.Shultzが記載したムギイワシの3亜種については,基亜種であるムギイワシと明瞭な差異が認められず,その有効性については疑問が残された. 5.これらの知見に基づき,同定を容易にするため,これら4属,およびヤクシマイワシ属とギンイソイワシ属に含まれる各種の明解な図を添付した検索表を作成した. 6.本研究と付随して行われたヒイラギ科魚類,およびクロサギ科魚類の研究では,前者で2新種と1日本初記録種を発表し,さらに後者では2新種を含む科内の分類学的再検討を行った.
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