この3年間の研究から、日本産小型サンショウウオの少なからぬ系統で、現在1種とされている個体群が分類学的に細分されるべきことが判明した。また、系統によっては、現在2種とされているものを分類学的に1種として統合すべきという結論が得られた。まず、(1)現在オオダイガハラとされる種は遺伝的に、本州、四国、九州産の3種とされるべきであること、南九州産未同定種は九州産の亜種として考え得ることが明らかになった(印刷済み)。(2)現在ブチとされる種は遺伝的特徴からみて、本州中部・近畿、四国と九州南部、九州北部と中国の3系統に分かれ、後2者が同所的に分布し、一部遺伝子で完全置換していることから、3系統はそれぞれ種のレベルで区分されるべきことが分かった(投稿準備中)。(3)愛知県産トウキョウは遺伝的にカスミとして扱うべきという結論を得た(印刷済)。(3)ヤマはハクバと遺伝的に区別できず、ハクバの同者異名とされるべきという結論を得た(投稿中)。 (4)カスミは遺伝的特徴から、九州+山口とそれ以外の2群に分かれ、中国山地産の個体群は後者の中で1群を成すので、2種1亜種を認めるべきであろうという結果が得られた(投稿準備中)。(4)ベッコウは九州産オオダイガハラと遺伝的に極めて近いという驚くべき結果が得られた。(5)オキは遺伝的に流水性の種より止水性のカスミに近いことが分かった。 (6)愛知県の一部に遺伝的にホクリクにきわめて近い種の分布することが分かった。(7)静岡、長野の山地で発見されていた未同定の種は遺伝的に独立種であることが結論された。これらの結果は、今後さらに多くの種について全個体群の遺伝的多様性を見直す必要のあることを示唆するとともに、現在、環境省のレッドリストに掲載されている種・個体群についての見直しを促すものでもある。
|