研究概要 |
セン類の材料としてセキルゴケ目Buxbaumiales,シッポゴケ目Dicranales,センボンゴケ目Pottialesの生鮮資料収集を野外調査(高知県)によって収集した.併せて頂生セン類やタイ類の材料の収集も行った.これらの生鮮資料の分子系統解析(分担:出口)のための試料調整を作業員を動員して行い,順次シークエンスを行い系統的解析を進めている.この一部は既に予報的に論文として公表した(Tsubota et al.1999).ここでは,これまで科の所属が議論されていたカガミゴケ属Brotherellaがハイゴケ科Hypnaceaeに置くよりもハシボソゴケ科Sematophyllaceaeに置くのが妥当であるという分子系統樹を得た.また,ハイゴケ属が多系統であることが明らかになった.比較形態学的研究(分担:峰雪,山口)として,免疫抗体法と共焦点レーザ顕微鏡の観察を行い,タイ類の細胞分裂に見られる核分裂と色素体の分裂の挙動を中心とした特徴からタイ類のケゼニゴケ属Dumortieraの系統について再検討を行った.その結果,前減数分裂時期にケゼニゴケ属が単色素減数分裂を行い,将来の胞子四分子領域に色素体が分配されてから,さらに色素体の分裂が続行し,その後に減数分裂が進行するという結果を得た.これはタイ類で一般的にみられる多色素体減数分裂とセン類やツノゴケ類,シダ植物のヒカゲノカズラ類に見られる単色素体減数分裂との接点に位置するコケの系統群であること示唆するものである.現在,これらの新奇発見を論文にとりまとめた(Shimamura et al.2000).また,精子形成の研究をマキノゴケ属Makinoaについておこない,他のコケ植物との比較を進めている.
|