研究概要 |
遺伝子解析に必要な諸機器を揃え,研究の態勢を整えた.両生類寄生線虫のうち,兵庫県産オオサンショウウオ寄生Spiroxys hanzakiとカエル寄生Spiroxys japonicaについて,ミトコンドリアDNAのCOI,ND4領域,核内DNAのリボソーム遺伝子ITS2領域を4種のプライマーを用いてPCRによる増幅を試みた.その結果COIとITS2の部分の増幅に成功した.しかし電気泳動で厳密に単一のバンドを得ることができず,そのためダイレクトシークエンシングは困難であった.この原因は類似配列を有する遺伝子が複数混在していることによるものとみられ,これら遺伝子をプラスミドと大腸菌を用いる遺伝子組換え法で単離することが必要であることが明らかになった.本年度は遺伝子組換え実験の許可を得ていないため,シークエンスの解析は来年度に持ち越された.これに並行してSpiroxys hanzakiの生活環を解明し,他の線虫類が5期の発育期を有するのに対し,4期しかない特異例であることを示し,種分化との関連を考察した.更にオオサンショウウオ寄生の線虫Filaria cingulaがそれまで言われていた旋尾線虫目糸状虫上科Filarioideaではなくカマラヌス目メジナ虫上科Dracunculoideaにであることを解明し新属を設定した.また両生類寄生原虫Trypanosoma nagasakienseを大分県産アマガエルより採取し,遺伝子抽出のために凍結保存した.さらに東アジア・東南アジア産の両生類寄生Trypanosoma類の分類学的な再検討を行い,一部を新属に配すべきことを提唱した.
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