研究概要 |
本年度はすでに細胞学的解析を行ってあるオニヤブソテツ類のオニヤブソテツ、ムニンオニヤブソテツ、ヒメオニヤブソテツ、ナガバオニヤブソテツ約500個体、ミヤコヤブソテツ、ヤブソテツ、クマヤブソテツ、ツクシヤブソテツ、ミヤジマシダなど約200個体について、フラボノイド組成を調査するための二次元ペーパークロマトグラフ(PC)分析および高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析を行った。これらの結果、それぞれの種の中では微小な変異を除いて基本的に組成の変化はなく、各種はそれぞれに固有のフラボノイド組成を有している事が判明した。 これとは別に本年度は、細胞学的解析を行っていないものについてはこれを引き続き行った。さらに、これらの分析と平行して、まだ採集を行っていない地域の植物については補足的な研究材料の収集も行った。 上記PCおよびHPLC分析によって同一組成とみなされた個体の抽出物は一括してフラボノイドの分離・定性に用いられた。本年度にフラボノイドの分離・定性を行ったのは広義のオニヤブソテツ類であるオニヤブソテツ、ムニンオニヤブソテツ、ヒメオニヤブソテツ、ナガバオニヤブソテツで、それぞれからフラボノールのkaempferol 3-O-glucoside, quercetin 3-O-glucosideなど、フラバノンのcyrtominetinやfarrerol、C-グリコシルフラボンのvitexinやorientinなどのフラボノイドが分離された。また、ヒロハヤブソテツ、ツクシヤブソテツ、イズヤブソテツ、ミヤコヤブソテツなどでは従来ヤブソテツ属のシダ類では報告されていないと推定されるフラボノイドの存在も明らかとなった。
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