研究概要 |
ヤブソテツ属はヒマラヤから日本にかけての日華植物区系区を中心に20種余りが分布している。このうち日本にはオニヤブソテツ(広義)、ヤブソテツ、ヒロハヤブソテツ、クマヤブソテツなど12種類が分布している。これらは特にオニヤブソテツを中心に形態や染色体レベルで多型であり、分類を困難にしている。 本研究では、これらの日本産ヤブソテツ属に加え、中国産の4種、さらには関連するCyrtogonellum属3種およびPhanerophlebia属2種も含めた植物種のフラボノイド化合物を分離同定し、さらにHPLCなどによってその組成も調査した。 分離されたのはフラボノール、C-グリコシルフラボン、フラバノンであった。主要化合物として分離されたのはフラボノールのKaempferolとQuercetinの3-O-glucosideであった。またこれらに伴って、以前にこれらの属から報告されていなかったKaempferolとQuercetinの3-O-galactosideおよび3-O-rutinosideも検出された。さらに、狭義のオニヤブソテツからKaempferol3-O-glucoside-7-O-rhamnosideも分離された。C-グリコシルフラボンとして、Orientin, Isoorientin, Vitexin, Isovitexin, Vicenin-2とそれらのO-glucosideが分離されたが、多くの種では微量成分であり、その分布は散在的であった。 自然界でも非常に稀なフラバノンであるFarrerolとCyrtominetinの7-O-glucosideは狭義のナガバヤブソテツとテリハヤブソテツから分離された。この化合物は以前には、広義のオニヤブソテツに含まれると報告されていたが、本研究において、これらはその中の狭義のナガバヤブソテツのみが合成することができ、狭義のオニヤブソテツには合成能力のない事が判明した。
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