研究概要 |
前年度に引き続き日本産ヒメハナカミキリ属(Pidonia)について解析を継続した。日本産全55種のうち、P.neglectaを除く全種と、大陸と台湾産の数種を含めた220 OTUについてミトコンドリアND5遺伝子の塩基配列(910bp)を決定した。必要に応じて同種の国内各地からの複数サンプルを解析に加えた。得られた塩基配列データをもとに最節約法、近隣結合法などの方法で系統解析を行った。その結果、日本産Pidonia属の4つの亜属の単系統性は支持され、各種間関係が一部を除き明らかとなった。 1.Pidonia亜属:8つの亜群が認められ、従来の形態による分類からは類縁関係がわからなかった複数の種類についてそれらの位置づけが明らかとなった。また、P.matsushitaiとP.tsuyukiiはこの亜属から独立していることが新たにわかった。 2.Mumon亜属とOmphalodera亜属:Mumon亜属は大陸産のP.debilisと日本産の種、そして台湾産の種の3群がほぼ独立に現れている。Omphalodera亜属では、P.warusawadakensisが1種で単独、韓国産と対馬産のP.puziloiがそれぞれ単独、そして本州のP.puziloiとP.testaceaを含む集団の4群がそれぞれ独立的な関係になっていることがわかった。 3.Cryptopidonia亜属:この亜属は従来amentata群とinsuturata群の2群と考えられていたが、前者はmiwai群とamentata群に、後者はsimillima群とP.insuturata,P.hayashii,P.hylophilaの各単独群となった。P.oyamaeはそれのみの群を形成しており、この亜属から独立していることが新たにわかった。 本研究により、ミトコンドリアND5遺伝子の塩基配列情報がカミキリムシ科の近縁種間の関係を知るためにきわめて有効であることがわかった。今年度までの結果は論文として準備中であり、今後はさらにハナカミキリ亜科全体を対象に種群より上のタクサの系統解析に有効な遺伝子領域の探索を行う予定である。
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