本年度は、最初に今後の予備的な研究として、これまで収集した縄文人・弥生人そして中国江南地方出土の古人骨のミトコンドリアDNAのD-loop領域のデータを使って、相互の系統関係を類推した。次にデータの面的な広がりを確保するために今回の研究のために収集した千葉県茂原市の太田貝塚出土度人骨のDNA抽出を開始している。また、試料の採取地点を増やすために、人骨の収集につとめた。その結果、北部九州の縄文-弥生移行期の代表的な遺跡である佐賀県大友遺跡から出土した人骨と福岡県岐志元村貝塚から出土した人骨の解析を行うことが可能になった。 茨城県取手市の中妻貝塚から出土した縄文人の系統関係を解析したところ、その変異は現代日本人の変異の中に散在する結果となった。縄文人の出自を明らかにするためには、日本のみならず周辺のモンゴロイド集団との関係を知る必要があることが明かとなったので、形態学的な研究から縄文人との類縁性が指摘されている南米のインディオのミトコンドリアDNAを調査することにした。ペルーの北部海岸地方のプレイインカ期の遺跡から出土した人骨数十体からDNAを抽出、PCR法で増幅した後、その塩基配列を決定している。縄文人との系統関係は来年度考察する予定である。
|