研究概要 |
確率過程のサンプルパスの解析について,本年度行った研究により得られた新たな成果は以下のとおりである. 1.ユークリッド空間上のWiener sausageに関する概不変原理が次元が4以上のとき成り立つことを証明し,現在論文を準備中である.これは従来中心極限定理の成立まで知られていたのを精密化したものであり,これによりサンプルパスに関する種々の極限定理が系として導かれる. 2.偏微分方程式の解の性質を確率過程(マルコフ過程)を用いて研究する際しばしば問題になる生成作用素の定義域の決定について,関数解析の立場からの研究を行い,L^2空間における定義域が簡明に記述されるための一つの十分条件を与えた.Riemann多様体など,いくつかの具体例について適用可能であることも示されている. 3.一般の状態空間上の対称拡散過程に関して,推移確率の短時間漸近挙動についての新しい評価式を得た.一つの応用例としては,フラクタル図形の上の対称拡散過程の推移確率密度が上からの良い評価を持てば,そのwalk次元は2以上であることが従い,標語的にはサンプルパスはユークリッド空間上のブラウン運動と比較して長時間のスケールで遠方に行きにくいことがわかる.また,拡散過程に対応するDirichlet形式のΓ_2が下に有界との仮定の下で,Varadhan型の推移確率の漸近評価が内在距離を用いて記述できることを示した.これらの結果を論文に纏め現在投稿中である.
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