研究概要 |
本年度は、強磁性半導体(Ga,Mn)As/非磁性半導体(In、Ga)Asヘテロ接合を介したキャリア及びスピン輸送機構を明らかにするため、昨年度確立した分子線エピタキシ再成長法を用いて強磁性/非磁性半導体p(i)n接合やpip構造を作製し、その電流電圧(IV)特性、発光・偏光特性を調べた。また、時間分解偏光フォトルミネッセンス法により、バルク半導体におけるスピン偏極電子、正孔の輸送について調べた。得られた成果を以下に記す。 ・n型の厚いIn_xGa_<1-x>As(x=0.15〜0.18)をバッファ層とし、格子緩和した基板上にIn_yGa_<1-y>As(y〜0.2)歪量子井戸を形成し、さらにその上に引っ張り歪が加わった強磁性半導体(Ga,Mn)Asを再成長したpn接合発光ダイオード構造を作製し、磁化容易軸が面と垂直方向にある強磁性半導体発光ダイオードを作製した。この発光ダイオードからの発光の、量子井戸の面と垂直方向の偏光にヒステリシスを観測し、スピン注入を確認した。 ・強磁性半導体(Ga,Mn)Asと非磁性半導体GaAsのヘテロ界面の価電子帯のバンド構造を明らかにするため、(Ga,Mn)As/GaAs/p-GaAsからなるpip構造を作製し、そのIV特性の温度依存性を詳細に測定した。IV特性は印加電圧の極性に依存し、(Ga,Mn)As/GaAs界面にポテンシャル障壁が存在することを示唆する非対称な特性が得られた。この結果をショットキー障壁のモデルを用いて解析した結果、(Ga,Mn)AsのMn組成によらず、ほぼGaAsの価電子帯端が(Ga,Mn)Asのフェルミエネルギーより約100meV高いことが分かった。
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