研究概要 |
本研究では、強磁性半導体を用いた半導体中へのスピン注入を実現するため、分子線エピタキシ再成長法により強磁性/非磁性半導体へテロ構造を作製し、その電流・電圧特性や発光の偏光特性を調べた。本研究で得られた成果を記す。 ・非磁性半導体へのスピン偏極電流注入を初めて確認した。InGaAs歪量子井戸を活性層とするpn接合発光ダイオードのp型層としてMnを〜5%含む強磁性半導体GaMnAsを用いた。GaMnAsの強磁性転移温度以下で、面と平行に数10ガウスの磁場を印加したところ、発光の偏光度に約±1%程度の差が生じ、GaMnAsの磁化曲線と同様なヒステリシスが見られた。 ・n型の厚いIn_xGa_<1-x>AS(χ=0.15〜0.18)をバッファ層とし、格子緩和した基板上にIn_yGa_<1-y>As(y〜0.2)歪量子井戸を形成し、さらにその上に引っ張り歪が加わった強磁性半導体(Ga,Mn)Asを再成長したp.n接合発光ダイオード構造を作製し、磁化容易軸が面と垂直方向にある強磁性半導体発光ダイオードを作製した。この発光ダイオードからの発光の、量子井戸の面と垂直方向の偏光にヒステリシスを観測し、スピン注入を確認した。 ・強磁性半導体(Ga,Mn)Asと非磁性半導体GaAsのへテロ界面の価電子帯のバンド構造を明らかにするため、(Ga,Mn)As/GaAs/p-GaAsからなるpip構造を作製し、そのIV特性の温度依存性を測定した。IV特性は印加電圧の極性に依存し、(Ga,Mn)As/GaAs界面にポテンシャル障壁が存在することを示唆する非対称な特性が得られた。この結果をショットキー障壁のモデルを用いて解析した結果、(Ga,Mn)AsのMn組成によらず、ほぼGaAsの価電子帯端が(Ga,Mn)Asのフェルミエネルギーより約100meV高いことが分かった。
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