1.量子細線束の作製と構造評価 GaAs(001)及びInP(001)基板上に作製したZnSe/CdSe単一量子井戸構造と超格子構造の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察し、格子像を解析した。X線回折やフォトルミネセンスでは試料の空間平均的な情報が得られるのに対して本方法では局所的な評価が可能になる。InP(001)基板上の4ML/4ML及び6ML/6ML超格子について(001)格子面間隔を詳細に調べ、以下の結果を得た。超格子1周期の長さに関するTEM解析とX線解析の差異は2Å程度であった。InP基板上の超格子ではCdSeは成長方向に伸びZnSeは圧縮されるが、その様子が直接的に観測された。CdSe/ZnSe界面で(001)格子面間隔の階段的な変化は観測されず、界面におけるZnとCdの相互拡散が示唆された。断面TEM像の本解析手法を微傾斜基板上に製作した量子構造に適用することにより、量子井戸面内ポテンシャル変調に対する歪みの効果の定量的な評価が可能になる。 2.量子細線束の光学的・電気的評価 微少領域の光学的評価を行うための顕微フォトルミネセンス装置を製作し、20μmの空間分解能を確認した。本装置を用いてZnCdSe/CdSe/ZnCdSeおよびZnSe/ZnCdSe/ZnSe単一量子井戸構造の均一性を評価した。井戸層厚の設計値はいずれも30Åである。試料面内で量子準位発光エネルギーに10meV程度のゆらぎが観測されたが、このゆらぎを引き起こす井戸層の厚みのゆらぎは1モノレイア程度、3元混晶層の組成ゆらぎは2%程度以下であることがわかった。本装置を量子細線束の均一性評価に活用する予定である。
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