研究概要 |
1.量子細線の作製と構造評価 GaAs(100)基板上にZnSe/(CdSe, ZnSe)/ZnSe単一量子井戸(SQW)構造をMBE法でさくせいした。基板の種類と井戸層成長時の原料セルシャッター制御の組み合わせで次の4種類の井戸構造を作製した。タイプA:平坦基板上にZnSe/CdSe同時供給で成長、井戸層はCd0.5Zn0.5Se平坦井戸。タイプB:微傾斜基板上にZnSe/CdSe同時供給で成長、井戸層はCd0.5Zn0.5Se微傾斜井戸。タイプC:平坦基板上にZnSe/CdSe交互供給で成長、井戸層はCdSe、ZnSeモザイク井戸。タイプD:微傾斜基板上にZnSe/CdSe交互供給で成長、井戸層はCdSe/ZnSe横形超格子井戸すなわち量子細線。タイプBおよびDは、X線回折とRHEEDその場観察で、成長の全期間にわたって表面に原子ステップ列が発達しており成長層の(100)格子面は基板のそれと基板の微傾斜角で決まる角度だけ傾いていることを確認した。透過電子顕微鏡で観察した格子像を解析し、タイプDの断面ではCdSe井戸領域がZnSe障壁領域内に、微傾斜角度に対応する間隔と方向で規則的に分布することを確認した。 2.量子細線の光学的評価 上記4タイプともPLと反射で量子準位間遷移が明瞭に観測され、良好なSQW構造が形成されていることを確認した。微傾斜基板の原子ステップの効果を調べるためにPLの偏光特性を調べた。タイプDからの発光は電界ベクトルがステップエッジに平行な方向に偏光していることが確認された(偏光度5%程度)。これは、タイプDでは量子細線構造によって量子井戸面内にポテンシャル変調が生じて面内異方性が発生したことを示している。
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