研究課題/領域番号 |
11650012
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
川口 健 名古屋工業大学, 計測分析センター, 助教授 (80144195)
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研究分担者 |
大野 勝久 富士写真フイルム, 足柄研究所, 主任研究員
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キーワード | アモルファス / カルコゲナイド / 薄膜 / 光誘起現象 / 光析出現象 / 光記録デバイス / 核生成 / 結晶成長 |
研究概要 |
平成13年度は、光析出現象においてバルクガラスと薄膜試料でなぜ核発生機構が異なるかについて調べた。実験に用いた試料は、バルクガラスではAg_xAs_<15>S_<40-x>系(35≦x≦45)、薄膜試料ではAg_x(Ge_<0.3>S_<0.7>)_<100-x>系(55≦x≦67)である。実験結果を以下に述べる。 1.バルクガラスでは銀濃度が低いほど析出銀量は少ないが核発生数は多い。銀濃度が高いと大きなサイズの析出物が見られるがその数は少ない。つまり銀濃度の高い場合、析出銀量は多いが核発生数は少ない。 2.薄膜試料では銀濃度が低いほど析出銀量は少ないが、核発生数は銀濃度による大きな変化はみられない。銀濃度の多い試料では銀粒子が大きく、ほとんど隙間のない密な状態で析出する。 3.金添加の光析出現象への影響はバルクガラスと薄膜試料では大きく異なる。 4.銀濃度の低いバルクガラスでは、金添加による核発生数の増加は少ない。銀濃度の高いものでは、金添加により著しい核発生数の増加がみられる。析出銀量は金添加してもさほど増加しない。このことは銀濃度の高低に関係なく言える。 5.薄膜試料では、銀濃度が低い場合、金添加すると核発生数の増加とともに析出銀量も増加する。しかし銀濃度が高い場合は、核発生数も析出銀量もあまり変化しない。つまり金添加効果はあまりみられない。 以上の結果をまとめると次のようなモデルが考えられる。均一核生成理論では銀濃度が高いほど核発生数も析出銀量も増加する。しかしそのようにならないので、光析出現象は不均一核発生であると考えられる。つまり核発生サイトが試料表面にあると考えられる。バルクガラスの場合、サイト数は銀濃度が低いほど多い。ガラス構造に関係していると思われる。薄膜試料では構造がバルク試料より乱れているので銀濃度が高くても多くの核発生サイトが表面に現れると考えられる。金添加すると金原子はクラスターを形成し、新たな核発生サイトになると考えられる。つまりサイト数が増加するわけである。もともとサイト数の多い試料では影響は少ないが銀濃度の高いバルクガラスではもともとのサイト数が少ないので影響は顕著に現れる。金添加による析出銀量の変化は、金添加によるガラス構造の乱れの増加に関係していると思われる。実験結果から判断すると、薄膜のほうが金添加により構造の乱れが多くなるものと推察される。
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