本研究は、GaAs基板上に成長したGaNの成長特性の解明を通じて、"格子不整合"かつ"結晶構造不整合"ヘテロ構造の作製に対する、基板表面エネルギーの効果を検証することを目的としている。得られた結果を列挙する。 1.GaAs(001)基板に直接GaNを成長すると立方晶層が得られた。これに対して、GaAs基板表面に20nmのAlAsを形成し表面エネルギーに変調を加えると、GaNの結晶構造は六方晶になることがわかった。 2.AlAs層の膜厚を1分子層から20nmの範囲で変化させた。1分子層の場合、結晶構造は立方晶が支配的であったが、GaAs上直接成長と比べてその配向性は弱まり、既に六方晶への移行が始まっていることが示唆された。極わずかな表面エネルギーの変化が、結晶構造に強い影響を持っていることを示している。また、膜厚を増加させるに従い、六方晶性は強まり、10nmのときに完全な六方晶が形成された。 3.以上の結果の原因としては、GaAsよりも表面エネルギーの大きなAlAsを形成すると、そのエネルギー損を埋め合わせるように結晶構造が安定な構造(GaNの場合は六方晶)に近づくのではないかと考えた。 4.GaAs基板上の六方晶GaNからの発光をはじめて観測した。 本年度の研究では、表面エネルギー変調によって、結晶構造不整合を制御できる可能性があることを示した。今後の課題としては、AlAs層に代えてAlN層を表面エネルギー変調層として用いること、あるいは、傾斜基板を用いることなどが考えられる。
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