研究課題/領域番号 |
11650015
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
植田 千秋 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (50176591)
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研究分担者 |
大高 理 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40213748)
武居 文彦 大阪大学, 大学院・理学研究科, 名誉教授 (60005981)
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キーワード | 不均化反応 / SiOガラス / 反磁性異方性 / ケイ酸塩 / 電子分布 |
研究概要 |
磁気測定の手法によりSiOガラスにおける結合状態を、電子空間分布の異方性から直接評価する手法を確立する。この目的のため前年度に引き続き、無機酸化物の微弱な反磁性異方性を検出するシステムを開発した。反磁性異方性はPaulingにより電子空間分布の異方性に由来することが指摘され、以来有機物に関する議論が展開されて来た。しかし無機物については測定データが少なく、未検討のままであった。具体的には無機物の反磁性異方性が、不純物に由来する常磁性異方性に比べて格段に小さいため、既存の方法ではこれを検出できなかった。そこで調和振動に基づく磁気異方性測定を、室温から800Kまでの温度範囲で行う装置を前年度に開発した。今年度その性能をさらに向上させ、1100Kまでの測定を可能にした。これによりキュリー則に従う常磁性異方性をほぼ完全に分離でき、データ集積がさらに進んだ。即ち雲母、粘土鉱物など、Si-O結合で構成される代表的な酸化物の反磁性異方性を新たに検出した。そして前年度までに提案したモデルに基づき結合一本当りの異方性を算出し、従来と矛盾しない結果を得た。このモデルは結晶を構成する個々の軌道が有意の磁気異方性を持ち、その単純和で物質固有の異方性が発生するという仮説に基づく。これによりSiOガラスにおける結合状態を直接判定する基盤が確立した。 一方、上記の装置により石英のα-β相転移に伴う磁気異方性の顕著な変化を新たに検出した。この結果を石英における電子分布の温度変化データと比較することにより、反磁性異方性と電子分布の対応を直接得ることが出来る。 今回開発した測定法により、高温におけるSiOの分解過程を、電子空間分布の変化から直接解明する展望が得られた。
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