(1)PbSe(111)表面、BaF2(111)表面、多結晶純鉄表面、TiNコーティング鋼表面について、微小角入射X線散乱実験を行い、その測定に基づき、「X線エネルギー二次元検出システム」を構築した。 (2)PbSe(111)結晶成長表面のその場観察を行い、表面の二次元核成長に伴う散乱X線強度の振動を確認した。また、様々な入射角、散乱角における結晶成長表面からの散乱X線強度を、運動学的散乱理論と動力学的散乱理論のそれぞれに基づいて幾つかの計算モデルをたてて求め、散乱X線強度振動の振幅が大きくなる最適な条件を求めた。その結果、入射角が全反射の臨界角のときに振動の振幅が最も大きくなること、また、散乱角が鏡面反射角よりも少しずれた角度のときに振動の振幅が大きくなることを求めた。 (3)SPring-8で高輝度放射光を用いて、多結晶純鉄表面とCrメッキ材料表面の微小角入射X線散乱実験を行った。X線入射角の変化に対する、材料表面層における結晶からの回折ピークの角度分布の変化の動力学的散乱理論に基づいた解析により、材料表面から深さ方向の、組成分布、及び歪分布を求め、表面近傍の新しい解析方法を見出した。 (4)「X線エネルギー二次元検出システム」を設計、立ち上げた。鉄表面から散乱したX線分布を、シンチレーションカウンター、SSD、そして、CCD素子を利用したX線エネルギー二次元検出システムの3種類の検出器で測定し、比較実験を行った。CCDの1素子にX線の1フォトン〜数フォトンの光量を入射させることにより、エネルギー分解能を持たせた2次元分布の測定が出来ることが分かった。また、フォトンのエネルギー測定のために最適なCCDの測定条件、暗電流ノイズの軽減のための工夫などを求めた。また、X線散乱光のCCDによる幾つかの測定実験を行い、材料表面を観察できる新しいX線顕微鏡の可能性を見出した。
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