局所解析を可能とする基礎的技術として注目されている第三世代シンクロトロン放射光マイクロビームの利用は、(1)結晶による反射・回折による単色平行ビーム、(2)湾曲ミラーやFZPによる単色または準単色の収束ビーム、の二種のマイクロビームに限られている。本研究の目的は、これまでどこもやられていない高エネルギー白色平行マイクロビームを創成して、それを白色利用の局所解析およびイメージング(X線散乱トポグラフィ)に応用するとともに、適当な回折ジオメトリによって表面トポグラフィを設定することである。 このような新しいマイクロビームの形成を、始めの2年間をかけた末に成功した。5μm以下の直径と200keVの性能を有するマイクロビームが得られた。さらにこのマイクロビームを再現性よくスリットシステムを製造する技術の改良につとめた結果、安定的に供給できるまでになった。このシステムによって、30、60、120keV散乱線による転位の個別分解トポグラフ観察に成功した。この結果は、2002年1月のシンガポールでのシンクロトロン放射光材料科学国際会議で公表した。 さらに転位のコントラストがエネルギーに依存すること、その原因は回折動力学効果によるものということを明らかにした。この結果は、今年9月、グルノーブルで開かれるXTOP-2002で発表の予定である。また、この高エネルギー白色平行マイクロビームによって、SiCの内部構造評価を行うと共に、InAs/GaAsの表面エピ膜結晶の構造評価にトライした。従来のトポグラフィとは質的に異なる画像計測法であることが確認された。
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