研究概要 |
光変調(up-conversion)効果実現を目的に、同一超格子内に二重量子準位を持つ構造をMBE成長させた。(1)成長した超格子構造は;はじめにInP(100)基板上にZnSe buffer層を1000Å成長し、ZnSe2ML、ZnTe2ML(以後(2,2)と記す)の超格子を3層、(2,6)の超格子を12層積層したものを1周期とし、これを30周期成長した。これを以後DSB(dual subband superlattices)構造と呼ぶ。 (2)DSBのX線回折測定の結果は;基板であるInP(400)からの鋭い回折ピークが見られ、更にその両脇に超格子構造による複数のサテライトピークが観測されたことから、この試料が良好な界面を持つ周期的構造を有していることが確認された。また、実測値はシミュレーションによるDSB構造のX線回折スペクトルとピーク位置がほぼ一致し、試料は設計どおりの樺造を有していることが確認された。 (3)DSB試料のPL測定により発光スペクトルの観測を行なった。測定は励起光源にHe-Cdレーザー(325nm、4mW)を使用し、測定温度10Kで行なった。その結果、2.1eV付近と1.9eV付近に2つのピークが観測された。ZnSeおよびZnTeの低温におけるバンドギャップはそれぞれ2.82eV、2.39eVであり、今回観測されたピークとはその位置が大きく異なる。そこでこの2つのピークがDSB中の2種類の超格子のサブバンド間遷移によるものと仮定し、それぞれの周期の短周期超格子との比較からピークの同定を行なった。そのために育成した(2,2)を100層積層した試料(2,2)_<100>および(2,5)_<100>のPLスペクトルでは、それぞれ2.1eV付近と1.9eV付近にピークが観測された。これら短周期超格子とDSBのPLスペクトルとの比較より、DSBの2つのピークがDSBを構成するそれぞれの短周期超格子からの発光であるということが確認された。
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