研究概要 |
光変調(up-conversion)効果実現を目標に昨年度育成した二重サブバンド(DSB:dual subband)超格子構造[(ZnSe_2,ZnTe_2)_3/(ZnSe_2,ZnTe_6)_<12>]_<30>に対するPL測定の結果、光源He-Cd(325nm,3.81eV)とAr^+(488nm,2.54eV)レーザーの場合はそれぞれの超格子に対応して1.9と2.1eVに発光が見られ、He-Ne(633nm,1.96eV)レーザーによる励起でも両者の発光が明瞭に見られた。高エネルギー側の発光ピーク強度はHe-Ne励起強度の約1.7乗に比例し、非線型過程による発光であることが強く示唆された。 Up-conversion効果の実験にはHe-Neレーザーを用いるため、詳細な知見を得るためにはDSB発光のエネルギー間隔を広げる必要がある。そこで今年度は試料構造を次のように設計し、DSB発光のエネルギーをレーザー光のエネルギーから離すことを試みた。その構造はZnSe 7MLとZnTe 2MLを6層(7,2)_6、その上に(2,5)_1を成長させ1周期とし、100周期重ねたものである([(2,5)_2/(7,2)_6]_<100>)。基板はGaAs(001)を使用し、バッファ一層としてZnSeを約2000Å成長させた。高分解能X線回折(HRXD)の結果から設計どおりの構造が育成されていることが確認された。すなわち、DSBにおけるダブルピークの発光エネルギーは試料構造の設計により制御可能であることが分かった。一方この試料のup-conversion効果による発光効率は昨年度の試料に比べ1/5程度しかなく、発光効率の向上が来年度の課題である。また、epi-readyのZnSe基板を入手できたので、この上に同様の構造を育成し、633nm線の透過量を外部から照射する325もしくは488nm線制御可能かも来年度の課題である。
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