HREELS装置は表面フォノン分散や表面プラズモン分散の測定に威力を発揮するが、従来の装置では角度走査は1次元走査に限られ、また角度分解能も1-2゜程度であった。また、MBE中や試料加熱中または光照射中における測定は難しく、相転移の研究には極めて不向きであった。我々が新たに開発した2次元角度走査型HREELS装置は分光器-試料間の距離が従来の装置に比べて大きく、さらに試料通電加熱時における電子軌道補正用の磁場レンズを内蔵するなどの工夫がなされているため温度変化測定及び蒸着中の測定が可能である。従って相転移の前駆状態としてのフォノン構造やプラズモン周波数の変化を高い角度分解能でin situに測定できる。またこの装置の高い角度分解能(<0.05゜)と広いダイナミックレンジ(0-10^6cps)を生かし、構造相転移における臨界散乱の秩序変数や相関距離等の高精度測定が可能である。このように本研究は振動状態-電子状態-臨界散乱をお互いに密接に関連付けた上で相転移現象を包括的に研究するため構造相転移の研究に多くの知見をもたらし新しい可能性を拓くものと期待できる。本年度はシリコン表面に金属を単原子層程度蒸着し、蒸着膜内に存在する2次元プラズモンの波数-エネルギー関係を測定した。乱雑位相近似を用いた解析の結果、蒸着膜内の電子は自由電子的な振る舞いをしていることが明らかになった。
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