研究概要 |
本研究は、シリコン基板上に高融点半導体である立方晶炭化珪素(3C-SiC)のエピタキシャル成長を、有機ケイ素化合物を原料に用い低温で実現するため、成長過程を原子レベルでモニターすることを目的としている。 平成12年度は、ジメチルシラン(DMS)を用いて、低温エピタキシャル成長実験を行い、減圧熱CVD法では950℃までしか成長を確認できなかったのに対し、トライオードプラズマCVD法では、900℃までエピタキシャル成長が可能であり、その成長の活性化エネルギーが約40kcal/mol減少し、トライオードプラズマCVD法では、平成11年度実験を行ったMMSと今回のDMSでは原料に拘らず、ほぼ同じ活性化エネルギーとなることを見出した。更に、科研費補助金で購入した差動排気型反射高速電子線回折装置(RHEED)を超高真空対応走査型トンネル顕微鏡システムの結晶成長チャンバーに装着し、清浄シリコン表面Si(2×1)構造形成の後、DMSの吸着・反応による表面構造変化の観察を行った。その結果、基板温度650-750℃において3C-SiC結晶のスポットがインキュベーション時間の後、現れた。またそのインキュベーション時間内にSi c(4×4)構造が出現し消失した。Si c(4×4)構造が出現する時間の逆数のアーレニウスプロットからその活性化エネルギーは約16kcal/molであった。また3C-SiCのスポットが現れてからSi(2×1)構造が消失するまでの時間をSiC初期成長時間とし、その逆数のアーレニウスプロットからSiダイマーの存在下でのSiC成長の活性化エネルギーは約45kcal/molであることが分かった。この値はDMS分子からの1,1水素脱離の活性化エネルギー68kcal/molやSiC結晶表面からの水素脱離の活性化エネルギー63、72kcal/molに比べ大きく、Si表面からの水素の脱離エネルギーとほぼ等しかった。このことからSi表面に吸着したDMSからSiダングリングボンドへ水素が移動し、その後水素が脱離することで反応が進行することが推察された。そしてSi表面からの水素の脱離が律速過程になっていると考えられた。
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