研究概要 |
1.剪断変形によるパルスエコー 超音波探針顕微鏡では,タングステン探針の根本に伸縮変形する圧電対を貼り付け探針先端を伸縮変形させて反射波の位相変化を検出する。導電体試料でない場合には試料表面の凹凸を他の方法で制御し音響インピーダンスの情報を取り出す必要がある。伸縮変形の代わりに剪断変形を利用するため,昨年度は5MHzで共振する剪断変形圧電体を直径0.5mmφのタングステン探針の根本に貼り良好な剪断変形パルスエコーを得ることに世界で初めて成功した。さらに今年度は10MHzの圧電体を使用しても良好なパルスエコーを得ることができた。しかしながら,パルス重畳法を用いた位相検波出力は探針試料間距離に対して線形の変化をする条件がまだ決まっていない。振幅を小さくすると位相検波出力が得られないためである。 2.伸縮変形による接触の検出 従来の伸縮変形で振動振幅を減少させることにより試料に塑性変形を与えることなく情報を取り出す可能性を探った。直径6〜8μmのカーボンファイバーを埋め込んだ複合試料の断面をSTM及び超音波信号により映像化することに成功した。 3.光ファイバーに取り付けた剪断変形版によるパルスエコー 光ファイバーの先端から約10mm上部に0.5mm厚の伸縮変形あるいは剪断変形の圧電体を4層積層して切断した側面を貼り付け超音波パルスを送り込む実験を引き続き行ったが,良好なパルスエコーが得られていない。探針全体に圧電体膜を形成してトランスデューサにすることを検討している段階である。
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