私たちは開発した簡易型光音響顕微鏡システムを使って不透明材料内のクラックやボイドを検出することに成功したが、残念ながら金属薄膜についてほとんどその有効性を見出すことができなかった。その理由として金属薄膜にレーザ光を照射すると、金属表面で光が反射され、熱源が膜表面に形成できないことが考えられる。あえて熱源を形成しようとすると強力なレーザ光を必要としなければならず、装置の大型化、コストの高額化に加えて周囲への反射光の跳ね返りの危険性も配慮しなければならず、誰でもが簡単に使える顕微鏡システムというコンセプトを離脱しかねない。この問題点を解決するのに、nonradiativeな表面プラズモンを使うsurface plasmon thermal wave (SPTW)microscopyの開発を試みている。この方法は数mWのHe-Neレーザ光を光源として用いることができるため、従来の簡易型光音響顕微鏡システムを一部改良するだけでよく、機能性、経費、安全性の点から非常に意義があるといえる。開発したSPTW顕微鏡を使って銀薄膜の光音響信号振幅のレーザ光変調周波数依存性を測定し10Hzから100Hzの間でf^<-0.9>(f:変調周波数)に比例することを見出した。この結果はR-G理論から予想されるバルク試料に対するf^<-1.0>依存性にかなり近いものであった。
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