研究概要 |
私たちはこれまで簡易型光音響顕微鏡システムの開発を行ってきた。顕微鏡システムの開発に際して基本とした設計思想は安価な部品を使うこと、構成装置も安価であること,取り扱いもやさしいこと等である。構築したシステムを使って各種材料(セラミックス、黒鉛、エポキシ樹脂等)の内部傷や熱物性評価を行ない、かなりの成果をあげることができた。その過程で残念ながら金属薄膜の熱物性評価に使うことには原理的に無理があることが分かった。すなわち金属は可視光をほぼ全反射すること、熱伝導率が良いため熱源の形成が他の材料に比べてできないこと等が主な理由である。その解決法としてSurface plasmon thermal wave microscopy法を提案し、平成11年度その基本的な実験を行ってきた。最終年度の12年度はこの方法を具体的に応用するための研究を行い、以下の成果をあげることができた。 1.気体レーザの代わりに半導体レーザを使用する場合の銀薄膜の角膜厚に対する共振曲線のシミュレーションと実験値の比較を行い、かなり良い一致を得た。 2.(1)の結果を踏まえ、金、銅薄膜の各膜厚についても実験を行い、いずれも理論にかなり値を得た。 3.金、銀、銅に対する最小反射率を求め、その関係が2次方程式で表現できることを見出した。 4.光ファイバーからのレーザ光を使うSurface plasmon thermal wave microscopy法を提案し、気体レーザを使う場合に近い実験データを得る方法を確立できた。 5.(4)の技術を踏まえて真空蒸着装置内への本装置の導入のための基礎実験を行い、金と銀について35nmから80nmまでの膜厚をリアルタイムで測定する方法の基礎を確立できた。
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