超短パルス高出力レーザー技術の進歩により瞬間的な出力が1TWを越すレーザー装置が汎用化されて久しい。このようなレーザーパルスを集光すれば10^<18>W/cm^2を越す照射強度が実現できる。このような照射強度下で原子はプラズマ化し、さらにレーザーパルスはプラズマに対して光圧を及ぼし電子プラズマ波を励起することができる。こうして発生した電子プラズマ波はレーザー航跡場といい、光速とほぼ同じ位相速度を持ち、かつレーザーの進行方向へGV/mを越す強い電界を有することになる。従って、このような航跡場に荷電粒子を入射することで加速することが可能となり、レーザー加速として注目されている。本研究では、このようなレーザー航跡場に関して、航跡場の時間分解計測、及び航跡場の2次元画像化を行った。この結果、特に2次元画像化において、励起レーザーの照射パターンに応じて励起されるレーザー航跡場が変化することが明らかになった。また、超短パルスレーザーを用いたシュリーレン法により、ガス中を、イオン化を伴いながら伝搬するレーザーの様子を観測した。この結果、ガス密度が高ければプラズマによるディフォーカスの効果が顕著になり、集光点までレーザーエネルギーを送ることができなくなることが分かった。ところで、レーザー航跡場をレーザー加速器とするためには、集光部の長尺化が必要不可欠であり、そのための方法の一つとして相対論効果と電子キャビテーション効果によるレーザーチャンネリングが考えられるが、レーザーチャンネリングを起すためには臨界パワーを上回るレーザーパワーをディフォーカスさせずに相対論効果や光圧が有効となる照射強度になるまで集光しなければならない。上述の実験結果から、静的に満たされたガス中でレーザーチャンネルを作るならば、ある程度低密度のガスを用い、それに見合う高出力レーザーを用いる必要があることが分かった。
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