カラーゾーンマップ(色視野)については、1953年のアメリカ光学会(OSA)による図が現在でも引用されているが、測定方法の詳細等が明らかでなく、信頼できる色視野の確立が要望されている。我々は、実用的観察条件で多くの被験者における心理物理学実験を行い、赤、黄、緑、青の4つのユニーク色成分の視野全域での等高線図をカラーゾーンマップとして提案することを目的としている。 実験は、本研究補助金による大型視野計を用いて行った。昨年度の研究成果を元に、直径2゜円形の赤、黄1、黄2、緑、青の5種の色刺激を採用した。黄1は他と等輝度で、黄2は約3倍の輝度レベルである。視野上の8方位において、各方位10゜毎の80゜までと中心(0゜)の合計65点を測定点とした。測定は片眼右で行い、被験者は呈示された刺激の色の見えを、反対色型色評価法、黒み評価、カテゴリカルカラーネーミングにより評価した。 その結果、赤、黄1、黄2、緑、青の色刺激各々について、ユニーク色成分による色視野が得られ、右眼を用いたので、どの色でも視野上で右側下方に拡がる傾向を示した。色別では、ユニーク色成分50%の領域で比較すると、青が最も広く左と上は30゜程度、右と下は60゜程度の範囲になり、次が赤と黄2で左と上は30°程度、右と下は30〜50゜程度の範囲、緑と黄1が最も狭く左と上は15゜程度、右と下は20〜40°程度の範囲になった。 右下方向に広いという特性はOSAの色視野と一致するが、緑のみ狭い特性はOSAの色視野と一致しない。黄1と黄2の結果から輝度レベルが低いと色視野は狭くなるので、OSAで用いた赤刺激は他の色刺激に比べて暗く、逆に黄刺激は明るかった可能性がある。 色視野の確立に向けてさらに多くの被験者で測定すると共に、黒み評価、カテゴリカルカラーネーミングの結果を解析し、基礎・応用両面で有用なデータを提供することが今後の課題である。
|