研究概要 |
本研究の目的は,量子系の制御のための新たな手段とし之量子Zeno効果あるいは反Zeno効果を用いることを提案し,その有効性を実証してゆくことである.量子Zeno効果を利用すると,観測や緩和といった非ユニタリー過程によって量子系の運動を制御することができる.過程の非ユニタリー性にも拘らず確率密度は保存される.コヒーレンスの消去あるいは破壊が本質的な役割を果たしているのであるが,このようなインコヒーレント過程によってユニタリー過程と同様の確率を保存する運動を実現しうることがとくに興味深い点である.反Zeno効果は,類似の効果であるが,この場合は観測や緩和によって逆に遷移が加速される. 今年度はまず,2準位系における反Zeno効果に関する研究を行なった.もともと,この効果は1準位から多準位への遷移に関して見い出されたものであるが,本研究では,1準位から1準位の遷移においても,ラビ振動の存在下での平均化された遷移ダイナミクスを導入することにより,同様の効果が存在しうることを明らかにした.さらに,光ポンピングを用いた実験系によって,2準位系における反Zeno効果を実証することができた.さらに,一般の緩和過程におけるデコヒーレンスの役割について研究を行なった.完全な緩和過程に対しては,量子Zeno効果は働かないことが知られているが,これは緩和過程がデコヒーレンスに対して一種の耐性をもっているためである.しかし,終状態のスペクトル広がりが有限な不完全な緩和過程に対しては,デコヒーレンスの影響は無視できなくなることを明らかにした.
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