分子の核磁気共鳴(NMR)を使った量子コンピュータの多ビット化に必要な下記の研究を行った。 1.多量子ビット量子回路の構成法 所望のユニタリー演算をNMRで実現できる基本量子ゲートだけを使ったNMR量子回路に分解する方法を研究し、前年度よりも効率的な量子回路を生成する方法を見出した。 2.同核多量子ビット制御用パルス構成法 複数の同核量子ビットを独立に制御するためのシェイプトパルス構成法を構築した。 3.同核3量子ビット量子コンピュータの実験 フッ素を3つ含む分子(ブロモトリフルオロブテン)に、2.のシェイプトパルス構成法を用いて、フッ素核を量子ビットとする3量子ビット量子コンピュータの実験を行ない、グローバーのデータベース検索アルゴリズムを実行した。 4.量子状態トモグラフィの研究 多ビット量子コンピュータの内部状態を観察するための量子状態トモグラフィの研究を行い、直接結合していない2量子ビットの状態を効率良く観測する方法を考案して、実験を行なった。 5.バルク量子計算における判定問題アルゴリズムの多ビット化 平均値測定しかできないバルク量子計算では、量子状態トモグラフィを使わない限り複数の量子ビットの状態を正しく読み出せないので、判定問題の答えは1量子ビットの状態として読み出す方が望ましい。そこで、Deutsch-Joszaのアルゴリズムをそのように変形して、多ビット化を可能にした。
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