研究概要 |
本研究はQ値の高い半導体微小共振器中で形成される共振器ポラリトンからの電磁波(約1THz)放射を実証するとともに、この電磁波をプローブとして、光子と強く結合した励起子のダイナミクスを解明することを目的とする.さらにこの系のTHz帯電磁波発生源としての性能を明らかにする.既に予備的な実験によって不明瞭ではあるが信号を捕らえていた.本年度はまず1)測定系の改良による測定帯域幅の拡大,2)素子を再設計することで放射電磁波周波数を1THz以上にする,を進めた.これらの準備は順調に進捗し,良好な測定系と素子を得た.この系において系統的な実験を進めた結果,1)放射電磁波の周波数と共振器ポラリトンモードエネルギー差の対応,特にエネルギー差の変化に応じた電磁波周波数の変化,2)励起子を構成する電子と正孔の相対距離と電磁波振幅の明瞭な相関,3)励起光パワーと電磁波振幅の対応,等により共振器ポラリトンからTHz領域の電磁波が発生することを確たるものにした.これらの結果は電磁波が共振器ポラリトン形成下での励起子数密度の周期的な振動から放射されていることを明瞭に示しており,電子系と光子系の周期的エネルギー交換というポラリトンの直感的描像を初めて実験的に示した.また共振器ポラリトンから放射されるTHz電磁波強度は,電磁波発生源としては十分ではないことも明らかになった.さらに,強い量子井戸直流電界下,あるいは強励起下等において電磁波の減衰が大きくなることを見い出す等,励起子ダイナミクス観測の予備的な実験も開始した.
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