研究概要 |
本研究はQ値の高い半導体微小共振器中で形成される共振器ポラリトンからの電磁波(約1THz)放射を実証するとともに、この電磁波をプローブとして、光子と強く結合した励起子のダイナミクスを解明することを目的とした.昨年度は系統的な実験の結果,共振器ポラリトンからTHz領域の電磁波が発生していることを確たるものにした.本年度はポラリトンダイナミクス,特に励起子位相緩和および共振器モードの緩和とTHz電磁波発生の関係に関して集中的に研究を行った.具体的には,強い量子井戸直流電界下(>80kV/cm)においてスペクトル上でポラリトンモードの線幅が広くなることに対応し,電磁波の減衰が強くなることを明らかにした.またこの原因が強電場下での励起子線幅の拡大に起因することを明らかにした.さらに強励起下においてもポラリトンモードの線幅が拡大するとともに,電磁波の減衰が大きくなることを示した.これらの結果は,ポラリトンモード振動における励起子コヒーレンスの重要性を示すものである.一方,種々のQ値をもつ微小共振器を作製し,Q値の低下とともに共振器モードの減衰が大きくなることで,やはりTHz電磁波の減衰が強くなることを示した.また,合わせて電磁波強度のQ値依存性にも注意し,単サイクルの電磁波に注目するならば,むしろ共振器Q値が低い方が強度が強いことを見いだした.この点に着目して,微小共振器を用いた高効率THz帯電磁波発生方法を提案し,従来バルク半導体表面からの電磁波放射としては最も高強度であるとされていたInAs表面を用いる方法と比較して1桁以上の高効率化を実現した.
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