本年度は昨年度使用した高速走査型のエリアセンサーの代わりに、市販のCCDカメラを利用した頭皮血流画像化システムの開発を行った。スペックル信号の走査レートが1/10に減少し、露光時間が10倍に延びるため、測定システムを根本的に見直し、改良を進めた。露光時間についてはレーザーをパルス照明したり、電子シャッターを利用することで調整した。、取り込まれるデータの間隔が10倍になったので、昨年度に利用したSBR値の代わりに、ある画素の周囲の光強度差を演算するMBR値を利用し、ほぼ同様の対速度特性を得た。スペックル信号検出用のCCDカメラが測定部位確認のために使っていたCCDカメラと共通に利用できるため、後者を省くことができた。このため測定プローブ全体がコンパクトになり、操作性が向上した。画素数が400X400に増加し、従来(100X100画素)よりも高分解能で頭皮血流マップを測定できるようになった。MBR値を用いた場合は血流マップのリアルタイム表示は難しいが、データを取り込んだ後1心拍分平均化することにより、毎秒30コマで血流変動を観察できるようにした。またノイズ軽減のため、ヘッド内で信号をデジタル化し、高速シリアル通信によりデータをPCに転送するようにした。以上の試作システムを利用して、健康成人の頭皮血流分布を測定し、経時変化、個人差などの基礎データを集めた。また市販の育毛剤を頭皮につけ、その前後で頭皮血流が上昇することを確認した。本年度の研究成果により、従来まで利用していた特殊なエリアセンサーを用いなくても血流測定が行えるようになったため、頭皮血流のみならず他の多くの部位に対する血流画像化システムの開発が容易になった。
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