当研究室で開発してきたレーザースペックル血流画像化法(レーザーフローグラフィー、以下LSFG)を利用して、本研究では頭皮血流分布測定用のLSFGシステムを新規に開発し、今まで未知であった頭皮血流動態の詳細な解析を行なった。11年度には眼科用に開発した高速走査型イメージセンサーボードと半導体レーザー照射部、および頭皮観察用CCDカメラを一体化した頭皮血流測定用プローブを試作した。プローブからの信号をハードウエア演算ボードまたはワンボードマイコンに入力して血流分布を演算し、PCに送ってディスプレイ上に血流分布や、経時変化をプロットするための制御・通信・解析用ソフトウエアを開発した。頭皮の一般的な血流動態を把握し、次に様々な刺激に対して血流がどのように変化するかを詳細に解析した。12年度は前年度使用した高速走査型のエリアセンサーの代わりに、市販のCCDカメラを利用した頭皮血流画像化システムの開発を行った。スペックル信号の走査レートが1/10に減少し、露光時間が10倍に延びるため、測定システムを根本的に見直し、改良を進めた。露光時間についてはレーザーをパルス照明したり、電子シャッターを利用することで調整した。取り込まれるデータの間隔が10倍になったので、前年度に利用したSBR値の代わりに、ある画素の周囲の光強度差を演算するMBR値を利用し、ほぼ同様の対速度特性を得た。画素数が400X400に増加し、従来(100X100画素)よりも高分解能で頭皮血流マップを測定できるようになった。以上の試作システムを利用して、健康成人の頭皮血流分布を測定し、経時変化、個人差などの基礎データを集めた。また市販の育毛剤を頭皮につけ、その前後で頭皮血流が上昇することを確認した。本年度の研究成果により、従来まで利用していた特殊なエリアセンサーを用いなくても血流測定が行えるようになったため、頭皮血流のみならず他の多くの部位に対する血流画像化システムの開発が容易になった。これらの研究成果はこの数ヶ月の間に論文2編程度にまとめて発表する。
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