近年、シンクロトロン放射光の高輝度な極端紫外線を用いた技術革新が活発に行なわれている。このような光を有効に活用するには、従来の可視光に比べて2桁以上の表面形状精度を持つ光学素子の製作と、その評価技術を開発することが重要である。比較的に大きな面の形状測定には、従来から被検物体面を基準参照面と比較する光干渉法が用いられてきた。しかし、この方法では測定できる精度が、基準となる参照面によって決定される。測定面が理想の形状に近づくにしたがい、この参照面の加工精度と、それを精度良く計測するための技術開発が必要となる。したがって、絶対の測定精度を得るには、本来から高精度が備わっている新しい干渉系を開発することが重要になる。点回折干渉系は、光が波長近くの微小な開口から回折すると、理想的な球面波が発生する回折原理に基づく。すなわち、この球面波を測定基準に選ぶことにより、究極の測定精度が評価できる。形状を表す干渉縞は、縞走査法を導入することによって高精度に読み取りが可能となる。 本研究では、高精度な計測を実現するために、可視光のHe-Neレーザ光源を用い、単一モード光ファイバーと縞走査技術を組み合わせた点回折干渉系を構築した。以下に本実験で得られた知見を示す。 (1)単一モード光ファイバーによって、理想的な球面波を得ることが可能である。 (2)光ファイバーを用いることによって、小さな検出部を持った自由度の高い光学システムが構築できる。 (3)縞走査法によって、干渉縞の高精度読み取りが可能である。 (4)市販の球面鏡について、数nmの精度で理想球面からの形状誤差を測定した。
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