研究目的は金属平面における表面プラズモン共鳴と金属微粒子における局在プラズモン共鳴との結合モードを用いて、高感度なセンサーを実現することである。表面プラズモン共鳴を用いたセンサーはすでに実用化されているが、光学系として高屈折率プリズムを用いた全反射減衰(ATR)法が必要で、装置が複雑になるという問題がある。これに対して、局在プラズモン共鳴を用いたセンサーの開発は未着手であるが、ATR法を必要としないため、透過型の測定が可能となり、通常の分光光度計に組み込むことで簡単に高感度な測定が行える利点がある。本年度は、まず、この局在プラズモン共鳴のみを用いたセンサーの開発を行った。金微粒子における局在プラズモン共鳴は微粒子近傍の屈折率に敏感であることは、Mie散乱の公式から容易に分かる。しかし実験的に調べることはそれほど容易ではない。本研究ではこのことを調べるために、金コロイド単層膜を用いた。この膜は、シランカップリング剤とアミノ基を両端に持つ結合剤を用いることで、直径10〜20nmの金コロイド粒子を、凝集させることなく、一様な分布でスライドガラス上に固定したものである。この金コロイド膜は非常に安定で超音波洗浄によってもはがれることはない。金コロイド膜を種々の厚さのPMMA膜でコートしたときの吸収スペクトルを測定した結果、局在プラズモン共鳴による吸収ピークが、膜厚の増加とともに、指数関数的に長波長側ヘシフトし、吸光度が大きくなることが分かった。さらに、局在プラズモン共鳴は粒子の表面から粒子の半径程度の領域の屈折率に依存していることが分かった。この特性はアフィニティセンサーなどへ応用でき、実際に抗原抗体反応の検出が高感度でできるととを確認した。
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