金コロイド懸濁液が赤色を呈するのは、入射光の振動電場と、金微粒子内の自由電子が、波長520nm近傍で、共鳴的に振動するためであり、表面プラズモン共鳴あるいは局在プラズモン共鳴とよばれている。この金微粒子が金属基板表面に近づくと、金属基板による鏡像効果金微粒子には双極子だけでなく、四重極子などの多重極子が励起され、共鳴波長が長波長側にシフトする。本課題では、この基板効果について研究を行った。 金属基板として金薄膜を25nm真空蒸着したスライドガラスを用いた。その上にAmino-ethanethiol(AET)の自己組織化単分子膜を堆積することで、金微粒子を固定した。金微粒子としては直径100nm以下の金コロイドを用いた。基板に対して、垂直な偏光成分のみによる吸収スペクトルから、共鳴波長を求め、理論計算による結果と比較した結果、AETの膜厚は0.3-0.4nmであることがわかった。 金属微粒子同士による結合モードの測定も行った。この測定のために、新たに、交互吸着自己組織化膜を用いて、金微粒子の多層膜を作製する技術を開発した。カチオン性、アニオン性のポリマーとして、それぞれ、Poly(ethyleneimine)(PEI)と、Poly(vinylsulfate)(PVS)を用い、これらの膜の間に金微粒子を挟み込んだ。このようにして作製した金微粒子多層膜では、微粒子間の距離がPEIとPVSの膜厚の和によって決まる。この系で、粒子サイズが大きくなるほど共鳴波長が長波長側にシフトすることを確認した。さらに、この多層膜をアルコールと水の混合液に浸け共鳴波長を測定した。その結果、水の濃度が大きくなるにしたがって、共鳴波長が短波長側にシフトする様子が観測された。これは、水によりポリマーが膨潤し、粒子間距離が大きくなることによって起きるためである。本研究により、微粒子-微粒子間あるいは微粒子-基板間がサブナノメートル分解能で測定できることが確認された。
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