本研究は、強力な超音波の音響放射圧によって重力の存する地上で材料を浮揚し、非接触の加熱・融解等の処理を可能にする無容器プロセシングの実現を目指す。超音波浮揚は、電磁力のように対象が導電体に限定されず、多様な材料を扱える点に大きな特徴がある。 本年度は、無容器プロセシングのための超音波浮揚システムについて、炉芯管内に形成される超音波音場の計算機シミュレーションを行った。本研究者らが独自に開発した3次元モデルによる有限要素法プログラムを用いて、炉芯管内を球形試料が軸方向、及び径方向に移動したときの固有周波数と音圧分布の変化を調べた。試料表面における速度ポテンシャル分布から、試料に作用する放射圧とベルヌイの負圧を求めて、浮揚力の特性を評価した。これらのシミュレーションを通して、最適な超音波浮揚システムを構成するための基礎データを蓄積することができた。さらに、試料の加熱に伴う炉芯管内雰囲気ガスの温度分布を求めるための差分法シミュレーションのプログラムを開発した。来年度は、これを音場の有限要素法プログラムと結合させることによって、より実際に即したシミュレーションを実現する計画である。またシミュレーション結果の実験による検証も試みる予定である。
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