金属の応力下での転位挙動を研究するため、レーザー超音波測定装置の開発を行った。今年度は装置の開発、より高感度なパルスエネルギー約25mJ、パルス幅6ns、波長532nmのパルスNd-YAGレーザー光発生装置(Minilite-M/MD)を購入し、超音波励起用の光源として用いた。超音波の検出は連続光Nd-YAGレーザ光からの散乱光を自作した共焦点型ファブリ・ペロー干渉計で分光することにより行った。干渉計の熱的安定性を補償するための安定化回路を作製し、アルミニウム試料でパルスレーザ励起の超音波を観測することに成功した。透過法で観測するよりも反射法を用いた方がより広帯域の超音波パルスを検出できることがわかった。しかし、目標である50MHzまでは足りず改良が必要である。レーザー超音波の励起機構は、熱の吸収による熱弾性効果と試料の蒸発による効果の二つあるが、レーザー照射点に墨汁を塗ることで墨汁の蒸発によって超音波を効率よく励起できることが判明した。これにより試料を直接傷つけることなく測定できる見通しがついた。また墨汁を塗った場合、励起される音波は縦波成分が多いことも分かった。来年度からは、引張試験器を導入して形状記憶合金やアルミニウムなどの応力下での音速・吸収測定を行う予定である。
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