本研究の目的は、過去の科研費の「能動型画像処理方式による結像光学系収差除去・補正」に関わる研究をベースにして、透過型電子顕微鏡電子レンズのコマ収差あるいは高次の反対称型波面収差をもつ収差の補正理論の確立と、画像処理に基づく実時間コマ収差補正装置を開発することである。 これに沿い平成11年度には既存の3次元結像理論にコマ収差を含む高次反対称型波面収差関数を組み入れた結像理論体系を確立し、収差補正の障害となる非線形結像効果のシミュレーションを行なっている。この結果より、試料による位相遅れが1/20波長程度以上では非線形結像成分が必ずしも無視できなくなり、コマ収差補正にも悪影響を及ぼす事が確認された。さて本コマ収差補正手法はフーリエ空間上での単純2次元位相補正フィルターに基づくものであり、平成12年度ではコマ収差補正装置のシステム設計とプログラム開発を行った。プログラム上の問題から、ビデオデーター収集用PCとフィルター処理用WSを分離しLANを介して非同期転送処理を行うオンライン方式を採用した結果、データー収集からコマ収差補正画像表示までに30秒程度が必要となり、当初予定の数分の1秒程度を大きく下回った。大部分の処理時間がPCでのビデオデーター収集と処理画像表示に費やされているので、ビデオデーター収集ドライバーをうまく作成し、データー取り込みとフィルター処理を同一のPC上で実施することで、当初予定に近い処理速度を実現できるよう努めたいと考えている。 一方電子顕微鏡の分野においては実時間コマ収差補正の意義は大きく、目下適用を検討中である。
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