研究概要 |
以下に、実験試料と実験装置の作成について記す. 実験試料の一つである音響インピーダンス整合層である層状構造物は、銅及び銀をぞれぞれ0.5mmの厚さで交互に積層させた空間変調周期1mmの試料とした.この厚さは、共鳴透過させる超音波の振動数が、よく用いられる超音波トランスデューサ(圧電振動子)の発振振動数である2MHzとするように決定したものである.また、この作成にあたって銅と銀を単純に加熱・加圧するのみでは、銅と銀が混晶状態になり易いため、田中貴金属工業の協力を得て、共融点以下の温度で銅と銀を圧着させる手法を開発した.実験で共鳴透過の存在を確認し、さらに超音波の液体への透過率向上効果を確認するため、層状構造物中の銅銀二重層の層数を2,4,6,8,10とした五種類の試料を作成し用意している. 試作した実験装置は,振動による外乱を避けるために本年度購入した除振台の上に備え付けた.以下に装置の概略を説明する.圧電振動子は送波用と受波用の二つを対向するように設置し,それぞれの振動子面は平行となるように微調され,平行を保ったまま上下に移動できるようにした.振動子間には,異種の金属板を交互に挟み込んだ音響インピーダンス整合層と,溶液を順に配置した.超音波測定への影響が大きいとされている回折広がりは,送波振動子の面より大きめな振動子面を持つ受波振動子を用いることで,目立たなくすることができた.得られた受波信号はデジタルオシロスコープ,またはLCZメータからGPIBを介してコンピュータへ自動的に取り込めるよう制御し,さらに解析も同時に行えるようにした.
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