研究概要 |
理論的研究では,主に「実効的反射係数」の詳細な解析を行い,超音波透過率向上の条件を厳密に求めた.四分一波長板および同一半無限物質間に挟んだ均一層に対する共鳴透過も「実効的反射係数」で解釈可能である.層状構造物では,超音波透過率のピーク周波数が等間隔に列ばないと結論できた.また,有限層状構造物に対する分散関係と「実効的反射係数」との関係を明らかにした.さらに,分散関係の透過阻止周波数域にも適用可能な群速度の定義を提案した. 超音波透過実験では次の三種のデータを収集した.(1)均一なCu板およびAg板8mm厚と10mm厚に対する透過データ.(2)二重層(Cu/Ag)数が,2,4,6,8,10,11,12の層状構造物に対する透過データ.(3)二重層(Cu/Ag)を5つ積層し,端面にさらにCu層を接続した層状構造物に対する透過データ.これらのデータ解析より,上記の群速度以外の理論的結論が検証された. 超音波の化学センサーへの応用実験では,市販飲料を含む各種味溶液の識別に音速を用いることに加え,より多くの味物質を含む飲食料品へ適用可能な手法の検討を行った.味の識別をより明確に行うため,超音波を味溶液に入射し,セル端面からの反射波を考察した.第1反射波からは振幅を測定し,第1,第2,第3反射波からはパワースペクトルを求めた.使用した液体は,純水,甘味(Sucrose)溶液,塩味(KCl, NaCl)溶液である.これより,溶液の種類に応じて,振幅とパワースペクトルに特徴的な差異があることを新たに確認した.また,超音波の音速にも,各溶液ごとの特徴が現れた.さらに,パワースペクトルのデータに対し,自己組織化ニューラルネットワークによる解析を行った.この結果,各種味溶液を正確に分類でき,超音波による味センシングの可能性を示唆できた.
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