研究概要 |
1.複数のアフィン関数の積は一般に凸関数でも凹関数でもないため、その最小点を求める乗法計画問題は多極大域的最適化に属する厄介な問題である.ある条件下では,目的関数の対数を最小化する等価な問題が分離可能な凹最小化問題となるため,凹最小化の汎用手法である矩形分枝限定法の適用が可能である.しかし,その基本設計は60年代であり,大規模な実験によって計算上の振る舞いが明確にされたことはこれまでなかった.そこで,乗法計画問題をベンチマークとして矩形分枝限定法のバリエーションをいくつかテストしたところ,常識と考えられていた分枝戦略等に誤りのあることを発見した. 2.目的関数の対数を最小化する上述の方法では,アフィン関数項を制約条件に組み入れることで分離可能性が達成される.そのため,制約条件の構造は破壊され,ネットワーク上での最適化に対しては線形計画法サブルーチンが効率的に機能しない.そこで,分離可能性を利用しない矩形分枝限定法の開発を行った.現段階では分離可能性を利用する方が高速ではあるが,今後,限定操作等の工夫によって実用化は可能であると思われる. 3.乗法計画問題の理論的性質として,その最適解が多目的最適化の有効解であることが挙げられる.多目的最適化では有効解集合の列挙が重要な研究課題であるが,3目的の場合に有効解集合の大きさを判定するアルゴリズムの開発も行い,良好な結果を得ることができた.
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