研究概要 |
1.乗法計画問題の代表的なクラスに複数のアフィン関数の積を凸多面体の上で最小化する線形乗法計画問題がある.この問題は,目的関数の対数を取れば分離可能凹最小化問題に帰着され,矩形分枝限定法を用いることができる.この限定操作を通常の線形計画緩和と連続ナップサック緩和の2段階で行うことで,非凸最適化問題としては異例なほどに効率よく厳密な大域的最適解を求めることに成功した.さらに,このアルゴリズムは他の大域的最適化アルゴリズムとは異なり,有限のステップで厳密解を生成する点が大きな特徴である. 2.アフィン関数の比の和を最大化する問題はある種の乗法計画問題に等価であり,応用上の重要性が広く認識される一方,大域的最適化問題の中でも最も解決困難な一つに数えられる.しかし,現実の問題では比の数は高々10程度であることが多く,このことを利用して比を成分とするベクトル空間上で働く分枝限定法を開発した.その結果,分枝木の成長は変数空間で働く通常のアルゴリズムに比べてはるかに小さく押さえられ,より効率よく大域的最適解を求めることに成功した. 3.乗法計画問題に上記の分枝限定法を適用する場合,限定操作で線形計画問題や凸2次計画問題を繰り返し解く必要があり,その効率がアルゴリズム全体に大きな影響を及ぼす.そこで,線形・凸2次計画問題を含むクラスの線形相補生問題を効率的に解決するアルゴリズムの研究も行った.このクラスに対しては,レムケ法などの組合せ的アルゴリズムに代わって反復アルゴリズムが主流になりつつあるが,その一つの円滑法を開発し,比較的に低い最悪計算量を実現した.
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