研究概要 |
複合材料構造物の成形プロセス中や使用時の外荷重に対する力学的挙動を考える上で,ミクロ/メゾスケールの不均質性を,計算手法の立場から,大域的不均質性と局所的不均質性に分類し,前者については数学的均質化理論を用い,後者については重合メッシュ法を用いるという,全く新規の階層モデリング手法の枠組みと理論構築を行った.また,この提案手法を具現化するためのプロトタイプ・プロブラムの作成を行った. 解析対象としては,以下のような幅広い応用を考えた. (1)熱可塑性樹脂を母材とする編物複合材料の深絞り成形シミュレーション (2)繊維強化プラスチックのRTM成形における樹脂浸透係数の解析 (3)粒子分散型複合材料における変形応力解析 (1)については,均質化理論を大変形問題に拡張した定式化を行っている.また,ミクロ-マクロ非線形解析の高速化技法を開発した.理論や解析手法の妥当性を検証するための実験として,アラミド繊維の編布とポリプロピレンよりなる複合材料を製作し,温度依存性を考慮した主軸・非主軸の一軸引張試験を実施した.これは,次年度に深絞り成形の実験に発展させ,シミュレーション結果との比較を行うための準備であり,現在までのところ良好な結果を得ている. (2)については,均質化理論を固液連成問題に拡張した定式化によりダルシー則の一般化を行い,樹脂浸透係数をミクロ構造に基づき求めるとともに,浸透特性を定性的に評価する手法を開発した.織布・編布・組布の解析を行い,有効性を確認した.次年度には浸透特性の定量化を行う見通しも得ることができた. (3)については,均質化理論と重合メッシュ法を併用する手法を開発し,周期性がない問題や,マクロな非一様場における局所応力解析を行うための高速解析手法と簡単な例解析による精度検証を行った.さらに粒子分散複合材料のみならずセラミックスなどの多結晶材料への拡張の基礎を築くことができた. 以上の数々の研究結果は国内外の学術講演会において発表を行い,論文を執筆し投稿中である.
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